株式会社Liquid Mine

エースオブカンパニー

株式会社Liquid Mine

骨髄検査の痛みから患者様を解放する
代表取締役 岸本 倫和
株式会社Liquid Mine
白血病向け次世代検査システムの開発・販売
個別化ゲノム解析によるがん変異特定
患者専用オーダーメイド検査薬の設計
血液検査による微小残存病変モニタリング

事業内容と事業の強みを教えてください。

弊社は、東京大学医科学研究所での長年の研究をベースとした、白血病患者様向けの次世代検査システム「MyRD®」(マイアールディー)の開発・販売を行っています。この技術は、現在の血液がん治療における「痛みが強く、患者様への負担が大きい」という課題を解決する3つの革新的な技術の結集です。
1.究極の個別化解析: 患者様一人ひとりのゲノム(全遺伝子情報)を解析し、がんの原因となる特有の遺伝子変異を正確に特定します。
2.オーダーメイド検査薬: 解析結果に基づき、その患者様専用の検査薬を設計します。いわば「一点物の物差し」で治療の進捗を測ります。
3.痛みの少ないモニタリング: 最大の革新は、従来「骨髄(骨の中に針を刺す)」でしか分からなかったがん細胞の増減を、血液検査のみで同等の精度で検出できる点です。
現在は、この技術を全国、そして世界の病院で誰もが受けられるようにするため、厚生労働省への承認申請に向けた準備に注力しています。


起業までの経緯を教えてください。

実は、私はこの会社の創業者ではありません。創業者は血液内科医であり、現場で苦しむ患者様を一番近くで見てきた人物です。私が2020年に入社を決めたのは、彼の「この技術で医療を変えたい」という圧倒的な熱量に共感したからです。
私自身、かつて大切な友人をがんで亡くした経験があります。「もっと早く、もっと負担の少ない形で力になれなかったのか」という後悔が、私の原動力になっています。白血病は小さなお子様から高齢の方まで、年齢を問わず発症するがんです。検査のたびに激しい痛みに耐える患者様を一人でも多く救いたい。その一心で、経営の舵取りを担っています。


仕事を行う上で大切にしている事を教えてください。

あらゆる判断基準を「それは患者様のためになるか」という一点に集約させています。創薬や医療機器開発のベンチャーは、莫大な研究開発費が必要であり、経営的には常に厳しい局面がつきまといます。しかし、目先の利益や効率を優先して、検査の質を落としたり、患者様への配慮に欠けるようなことがあっては、存在意義を失います。
「この製品が世に出れば、どれだけの子供たちが涙を流さずに済むか」。その未来を想像しながら、たとえ遠回りでも誠実なエビデンス作りと、VCやエンジェル投資家、補助金を活用した健全な資金調達を行い、患者様第一の姿勢を貫いています。


現在の企業課題/事業課題について教えてください。

国内ではすでに多くの病院から期待の声をいただき、ニーズの確信を得ていますが、課題は「世界からの期待にいかに早く応えるか」です。 驚くべきことに、まだ承認前の段階ですがアメリカやヨーロッパの専門医から「ぜひうちの患者様にも使いたい」という問い合わせが届いています。
医療技術に国境はありません。海外の規制当局への対応や体制構築を急ピッチで進め、「日本発の技術が世界の血液がん治療を変えた」と言われる未来を一日でも早く手繰り寄せたいと考えています。


企業としての最終的な目標を教えてください。

私たちのゴールは、この検査が「当たり前のインフラ」になることです。国からの承認を得て保険適用となり、患者様が1割〜3割の負担で、病院で採血することで精緻な治療計画が立てられる世界を目指しています。
将来的には血液がんだけではなく、他のがん種への応用も視野に入れ、すべてのがんを克服する社会を実現したいと考えています。


今後個人としてチャレンジしたい事を教えてください。

私は2011年から14年間、テレビ番組の「カンブリア宮殿」を欠かさず録画し、経営者の格言や戦略をノートに書き留めています。そのノートは今や経営のバイブルです。
いつか自分自身がその番組に出演し、次世代の起業家に希望を与えられるような経営者になることが、私の大きな夢です。