品質を届ける
医薬品GMP・GCTP対応システム導入支援
クラウドサービス「BatchLine」国内外展開

Q事業内容と強みを教えてください。
弊社は「ライフサイエンスデジタルコンサルティングファーム」という名前の通り、ライフサイエンスの領域に特化したデジタル化のご支援を行っています。事業の柱は大きく3つあります。
① 医薬品製造におけるGMP・GCTPコンサルティング
医薬品製造の現場には「GMP(医薬品等の製造管理及び品質管理の基準)」や「GCTP(再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準)」といった厳格な法的規制があります。ITシステムを導入する際には、こうした規制やガイドラインに準拠した形で進める必要があり、その専門知識を活かして、医薬品メーカー様の製造分野を中心に、ITコンサルティングやアプリケーション・サービスの提供を行っています。
② クラウドサービス「BatchLine」の国内外展開
BatchLineというのは、タイのバンコクを本拠地とする会社が開発した、医薬品などのライフサイエンス製造向けのSaaS型MESです。CEOは英国人のDavid Margetts氏で、電子製造記録、いわゆるEBRを中心に、製造現場の業務をデジタル化する仕組みです。すでに世界10社以上の企業で導入されています。日本ではこれまでに、企業様1社と、大学関係の研究所を含むアカデミア1件への導入実績があります。弊社は、BatchLine付加価値販売代理店(Authorised BatchLine VAR Partner)として、中小規模から大企業の幅広い範囲で、このサービスを国内外に広めていく役割を担っています。
③ AIを活用したデータ抽出サービスとデジタルツイン開発
現在、冷蔵庫や冷凍庫、各種の表示器など、ネットワークに接続できない機器は現場に数多くあります。そこで、スマートフォンのカメラで数値を撮影し、AIで解析してPCアプリやExcelなどにデータを自動入力できるサービス「SnapVox」を開発しており、今年12月頃の商用化を目指しています。また、製造ラインをクラウド上で仮想的に再現し、最適なパラメータや製造環境の設定を検証する「デジタルツイン」の研究にも取り組んでいます。私自身は神戸大学の客員准教授を務めており、大学の皆様と一緒にこうした研究活動も行っています。

Q起業したきっかけを教えてください。
私は1983年に大学を卒業し、当時「チバガイギー」というスイス系の製薬会社に入社しました。もともと海外で仕事がしたいという思いが強く、そのチャンスがあるのは外資系の会社しかないだろうと考えての選択でした。
実は入社直後はプロパー(現在のMR:医薬情報担当者)として採用されたのですが、入社1週間の社員研修のときに「社内のIT体制を強化したいので、メインフレームコンピューターのオペレーションをやりたい人はいますか」と聞かれ、面白そうだと思って手を挙げたんです。この一言で、人生の方向がガラッと変わりました。
最初はデータセンターの掃除、コンソールの前に座ってのオペレーション、そこからシステムを制御するプログラム言語を使った自動化など、少しずつできることを広げていきました。1995年には阪神大震災を経験し、その翌年には会社が合併してノバルティスファーマになるという大きな変化もありました。
それから60歳になるまでの36年間、私は同じ会社(社名は途中でノバルティスファーマに変わりましたが)に在籍し続けました。外資系企業では珍しいことかもしれませんが、オペレーターからシステムプログラミング、インフラ構築、情報セキュリティ、IT組織運営管理、工場IT運営、ヘルプデスクなどのユーザーサービスなど、ほぼ5年ごとに役割を変えていただけたことが、長く在籍できた理由だと思っています。中でも兵庫県の篠山工場でIT部門の責任者を9年間務めた経験は、今の仕事に直結しています。
ノバルティスファーマのような大企業では、ITへの投資額も桁違いです。工場全体のコンピュータ化だけでも10億円以上を投じてシステムを導入することができます。
ところが定年退職後、神戸のポートアイランドにある神戸医療産業都市推進機構で、白血病治療薬「キムリア」の細胞製剤製造に関わるIT担当としてお仕事をさせていただく中で、まったく異なる現実を目の当たりにしました。同じようにゼロからIT化を進めようとしても、資金の桁がまるで違う。何ができて、何ができないのか、優先順位をどうつけるべきかを、一から考えなければならなかったんです。
そのときに改めて日本の医薬品業界を見渡してみると、国内の医薬品製造拠点はおよそ1000ヶ所以上あるといわれていますが、そのうち十分に電子化されているのは大企業を中心とした2割から3割程度に過ぎません。残りの多くは紙とシステムのハイブリッド、あるいは紙やExcel表などによるマニュアル対応です。
近年DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれていますが、そもそもデータや情報が電子化されていなければ何も始まりません。紙に書かれた記録では、活用のしようがないんです。そして、この電子化ができていない状態を放置していると、大企業と中小企業の格差はどんどん広がっていく。これは目に見えている未来でした。
だからこそ私は、日本のライフサイエンス業界において、品質の確保された製造の仕組みを規模を問わず行き渡らせる環境をつくりたいと考え、この会社を立ち上げました。
Q仕事を行う上で大切にしている事を教えてください。
私が仕事をする上で大切にしているのは、「変化を受け入れ、チャレンジしていく」ということです。
弊社は立ち上げたばかりのスタートアップです。私自身はこれまでITのスペシャリストとして仕事をしてきた人間で、営業や経営者としての人脈づくりといったことは、この歳になるまでほとんど経験してきませんでした。だからこそ今、こうした新しい領域にチャレンジしていくこと自体が、私にとってはとても面白い時間になっています。もちろん苦しいと感じる瞬間もありますが、それでもやっぱりチャレンジしないとダメだと思うんです。
このモットーは、若い頃の経験にも根ざしています。外資系企業に入り、初めての海外出張を経験したときのことです。海外出張は基本的に1人で行くのが原則で、複数人での渡航は「もったいない」と言われるような環境でした。ネイティブの方との会話にはついていけず、学校で習った文法だけでは、スピーキングもヒアリングもまったく歯が立ちません。それでも、そうした状況を楽しもうとする姿勢こそが本当に必要なんだと気づかされました。
もうひとつ、私は登山も趣味にしていて、日本百名山を妻とともにすべて登り切った経験があります。単調な道をただ歩き続ける中で、「勝つことが大事なのではなく、続けることが大事なんだ」ということを何度も実感してきました。チャレンジすることと、続けること。この二つは、私が仕事をする上でずっと大切にしている姿勢です。
Q今までで一番辛かったことを教えてください。
正直に申し上げると、人生の中で特別「辛かった」と思うほどの出来事は、実はあまりないんです。ただ強いて挙げるなら、自分がやりたくないことをやらなければならない場面は、今でも少ししんどく感じることがあります。
それでも、そうした場面も「チャレンジだ」とポジティブに捉えてやってみると、不思議と自分の中で馴染んでいくものです。関西弁で言うところの「これくらいにしといたろか」というくらいの気持ちで臨んだことが、結果的にはうまくいっていた、ということもよくあります。逆に、うまくいくと思っていたことがそうでもなかった、ということもある。結果というのは本当にわからないものだと、つくづく感じています。だからこそ、辛かったこともしんどかったことも、続けてやってみた先にある結果を信じるようにしています。
Q企業としての最終的な目標を教えてください。
企業としては、LSDCを「ライフサイエンスのDXの専門家集団」にしていきたいと考えています。
今は社員が少人数の小さな会社ですが、将来は、若い方々にどんどん参画していただけるような組織にしていきたいですね。社員という形に限らず、インターンやアルバイトという関わり方でも構いません。LSDCが取り組んでいることに、少しでも興味を持って加わっていただける、そんな組織を目指しています。
5年後、10年後にこの会社が継続できているのであれば、対象を医薬品の製造に限定せず、食品や農薬など、ライフサイエンスと呼べる分野全般でいろいろな形で貢献できたらと考えています。
Q今後個人としてチャレンジしたい事を教えてください。
個人としては、今まさに人とのネットワークを一生懸命築こうとしているところです。初めての営業、初めての経営というものに、この歳になって挑戦している最中なんです。年齢は関係ないと思っています。
その一環として、LinkedInで、これまでの経験を活かしたコラムを毎週月曜日と木曜日に発信しています。少し硬い内容が多いかもしれませんが、興味を持っていただけたら、ぜひご覧いただければ嬉しいです。
知名度を上げたいというような気持ちは、正直まったくありません。ただ、これまで自分がやってきたことを、少しでも皆さんのお役に立てる形で活かしていけたらと思っています。人生がどれだけ続くかはわかりませんが、生きている間は、そうした形で誰かのお手伝いができたら、それでいいと思っています。

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