有限会社ミナミ

ジビエを当たり前の美味しさに
取締役社長南 将夫
有限会社ミナミ
ジビエ肉加工・販売
猪ガリぺバーガー提供店
「おかやまジビエみなみ」責任者

Q事業内容と強みを教えてください。

私たちは岡山県新見市で、地元で獲れた天然のイノシシ肉を、解体から加工、販売までを一貫して手掛けています。猟師さんが山で仕留めたイノシシを1頭丸ごと仕入れ、自社の加工場で解体し、精肉から商品化、販売まで行っており、店舗の一角ではお客様に直接ご来店いただいて購入していただくこともできます。もう一つの事業として、創業当時から続く工業製品の手作業の下請けも一部残っています。
強みは大きく3つあります。
・非効率を磨いた製造工程
ジビエの解体はどうしても一つひとつ手作業になる、効率の悪い業界です。ただ、私たちには長年培ってきた工業製品の下請けの経験があります。その経験を生かして非効率な工程を少しでも効率よくし、コストを抑えて市場にお届けできるようにしています。
・臭みのないお肉
イノシシ肉は「臭みがある」と思われがちですが、私たちのお肉は臭みがないと強い評価をいただいています。インターネットの口コミでも「臭みがない」という声をたくさんいただいており、それが私たちの自信になっています。
・商品開発力
ただ精肉を売るだけでなく、そこから加工品へと商品を進化させ、売り方にもさまざまなチャレンジを続けていることも強みだと思っています。


Q起業の経緯を教えてください。

私の実家は、元々父が創業した自動車部品の下請け工場で、自動車のワイヤーハーネスを製造していました。ですが20年以上前、下請け業からの脱却が叫ばれていた時期があり、私たちが手掛けていた仕事がどんどん海外に流れていく状況が発生していました。このままではまずいと新しい事業の柱を探していたのですが、まったく違う業種に変えるにはノウハウもつながりもなく、悩んでいました。
そんな時、父の友人に猟師の方がいて、その方から「イノシシは獲れるけれど、売る方法がないんだ」という相談を持ちかけられました。実際に食べさせてもらうと、とても美味しいお肉だったんです。当時、楽天などインターネットで購入できるサービスが伸びてきていた時期でもあり、大学時代からパソコンに少し明るかった私は「これならネットで売れる」と思い、始めることにしました。
もう一つ、私自身が大学卒業後すぐに地元の岡山県新見市に戻ってきていたことも大きいです。外に出なかった分、この地元が好きで、廃れていくのが嫌だという思いを高校生の頃から持っていました。せっかくなら地元の食材を盛り上げる事業ができればと考えていたところに、ちょうどこの話が舞い込んできたのです。「あまり知られていないけれど、味は美味しい、いい商品だ」と思い、これでやっていこうと決めました。今からもう16年ほど前の話になります。
事業としての手応えが変わってきたのは、4年前の春、イノシシ肉のハンバーガーを手掛けてからです。そこから流れがだいぶ変わってきたと感じています。


Q企業理念の決め手を教えてください。

正直なところ、企業理念をまだ完全に掲げるところまでは行っておらず、手探りでやっている部分もあります。ただ、一番大事にしているのは、日本の地域の皆さんや地域の資源を生かして、日本の発展に貢献できるように、自分たちのできるところから挑戦し、日々改善していい仕組み、いい形を作っていこうという思いです。
地方創生というよりは、ジビエの業界そのものが全体的に苦しい業界だという現実を知ったことが大きいです。そこを解決できるように自分でも力になれたらという想いから、今取り組んでいるのがあらびき猪肉100%で病みつきになる味付けにこだわったハンバーガー「猪ガリぺバーガー」を含めた事業です。この田舎である程度安定した収益が上がる形を作ることができれば、同じような環境にある他の地域の方にもそのパッケージを共有することができ、各地方のジビエの鳥獣肉処理施設をされている方の経営が安定できる仕組みが作れると考えています。
それが一つのネットワークのようにつながっていけば、全国で捕獲されたイノシシや鹿のうち食肉として消費される割合が今は10%にも満たない状況を、20%、30%、40%と徐々に上げていけるはずです。当たり前に食べる存在にはならなくても、数カ月に一回、少なくても年に一回、特別な日に食べる食材くらいにはなれるよう、進化させていきたいと思っています。


Q今までで一番辛かったことを教えてください。

これは仕事と直接関係のない話になるのですが、2020年、オリンピックがあった年の春に、ヘルニアをこじらせてしまったことが人生で一番大変な出来事でした。最初は足がつまずく程度だったのですが、悪化してしまい、結論から言うと一度両足が動かない状態になりました。
入院前も仕事の納期があったので、片足を引きずりながらゴールデンウィークも仕事を片付けていました。そして入院し、当初は胸のヘルニアを取る手術だけで済む予定だったのですが、手術中に出血してしまい、神経を圧迫していたヘルニアの摘出はできたものの、骨を削って神経の通り道を確保する形になりました。ところが、骨を削ったことで強度が落ちてしまい、その日の夜トイレに立った際、背中でパキっという音がして削った骨が折れてしまったのです。折れた骨が今度は神経を圧迫し、気づけば両足が動かない状態になっていました。
2回目の手術では背中にボルトを10本ほど入れて支えを立てる、大掛かりなものでした。これまでそこまで大きな手術をしたことがなかった私にとって、術後の痛みは想像以上で、体を動かすたびに激痛が走るという夜を過ごしました。両足が動かず不自由な生活とリハビリはとても大変でしたが、結局入院から退院まで3か月かかりました。幸い、コロナ禍で面会が制限されていた分、病室でリモートワークをして、溜まっていた経理の仕事を片付けることができたのは、大変な中でも良かったことだったと思います。


Q仕事を行う上で大切にしていることを教えてください。

食品を扱う仕事をしているので、万が一があってはいけないという思いを大切にしています。完全にできているかというとまだ甘いところもあるのですが、元々工場をやっていた経験も生かし、仕組み化を大事にしています。みんなが点でバラバラに適当に仕事をするのではなく、お客様に確実にいいサービスを提供するために、スタッフでルールややり方を共有し、いい仕組みを作っていく。
これは今に始まったことではなく、元々自動車メーカーの部品の生産ラインを作っていた経験からずっと持っている考え方です。いいものを量産するためのルールややり方を学んできたので、別の事業をする時にそれを生かさないのはもったいないと思っています。ジビエに取り組む時に、自分が持っていた力で一番役に立てるのは、その効率的なところを少しでも持っていけることだと思い、これは大元から事業に対して持ち続けている考え方になります。


Q企業としての最終的な目標を教えてください。

イノシシや鹿といったジビエの消費量を、もっともっと広げていきたいと思っています。今はほとんど食べる機会がない状態から、当たり前に身近で、安定して美味しいものが食べられる環境を作っていく。そのために、私たちが手掛けている猪ガリぺバーガーが、日本中どこでも食べられるようになり、全国のいろんな処理業者さんにもお肉が流通することで潤う、という形を作れたらいいなと思いながらやっています。


Q今後個人としてチャレンジしたいことを教えてください。

最近は仕事ばかりでプライベートの欲はあまりなくなってきたのですが、事業に紐づく話で言うと、ハンバーガーのコンテストのようなところに、猪ガリぺバーガーで挑戦できたら面白いなと思っています。目立つところでこのバーガーの実力を試してみたいという気持ちがあります。他の美味しいハンバーガーと肩を並べて、「うちの方が美味しいよ」と言ってもらえるように、商品作りからしっかりさせていきたいですね。


Q今後、知り合いたい事業内容や会社様について教えてください。

イノシシ肉の加工できるが流通に困っている処理施設や行政の担当者さん、猪ガリぺバーガーを広めるためのイベント主催者の皆さんと知り合えたらと思っています。また、常々思っているのですが、ジビエを使ってみたい、あるいは使っているけれど仕入れ先の一つに加えたいという飲食店さんとも知り合えるといいなと思います。冬の時期には「獲れたら送ってください」という関係の東京の飲食店さんも少しずつ出てきているので、そうした形がもっと広がればいいなと思っています。


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