ジャズピアニスト

自由を尊重し、
音で寄り添う
音楽家阿部 路子
ジャズピアニスト
ジャズピアニスト
Eラーニング・音楽指導

Q事業内容と強みを教えてください。

事業内容は、ジャズピアニストとして、お店やイベントで演奏させていただくことが中心です。ソロのこともありますし、お店側のご要望に合わせてバンドで入ることもあり、最近はバンドの方が多いです。もう一つ、最近始めたのがEラーニングの事業で、どちらにも共通しているのは、そこにいる方を一人にさせない、絶対に楽しんでもらうという姿勢です。
お店によっては会話中にあまり大きな音で演奏してほしく無い雰囲気の時もあるので、音の大きさや空気を読んで、MCが必要かどうかを頼まれなくても察するようにしています。33年ほどこの仕事をしているので、お客様同士の会話にウイスキーの話題が出てきたら、サントリーのウイスキーにまつわる曲をさっと差し込んでみたり、商談の空気がうまく噛み合っていないときに、少しハッとするような音楽で場を仕切り直したりすることもあります。喜んでいただけたことがオーナーさんに伝わって、またその方がお店を使ってくださる、という良い循環が生まれています。
Eラーニングの方は、3ヶ月で30本の動画を配信する内容です。日本の教育の中で「タンタカ」と教わるリズムが、ジャズでは「ダゥディバ」のような歌い方に変わります。歌えないから弾けない、頭打ちになってしまって苦しんでいる方がたくさんいるので、一ヶ月は歌い方、二ヶ月目はリズムの乗せ方、最後にはジャズピアニストの大事な仕事であるイントロとエンディングの作り方までを教えて、3シーズンでジャズバーのセッションに一曲参加できるくらいのところまで導く内容になっています。昔ピアノを習っていたけれど今はやっていない、という団塊世代の方にも、もう一度夢を叶えてほしいという思いで作りました。


Q起業に至るまでの経緯を教えてください。

もともとは、クラシックピアニストでした。近所にジャズ喫茶があって出入りはしていたのですが、当時はジャズを聴いてもよく分かりませんでした。打ち合わせもないのに誰が来ても自然に演奏が始まる、不思議な音楽だと感じていました。
転機になったのは、ピアノ4台とオーケストラという編成のクラシックのコンサートに出演したときです。周りからはとても良くできたと言われても、自分の中では全然気持ちよくありませんでした。ピアノが4台並ぶと、音が伝わる速度の違いで、自分の耳にはすべてずれて聞こえてしまうんです。指揮者に合わせていれば客席にはまとまって聞こえますが、ステージの上ではずれている。どんなによくできても達成感がなくて、バッハのお墓を建てた気分で終わる。これでは生きた表現として生きていないと感じました。
そこでジャズ喫茶の光景を思い出しました。みんな打ち合わせもないのに、生き生きとした表現として、すごく楽しそうに演奏している。クラシックをやめようと決めて、生徒さんも全部他の先生に託して、ジャズピアニストになると宣言しました。ちょうどその年に丸亀ジャズストリートが始まり、出入りしていたジャズバーのオーナーに「ちょっと弾いてみて」と言われて弾いたことがきっかけで、次のジャズストリートに出るよう声をかけられ、出演したらそこからどんどん紹介をいただくようになりました。勉強とステージを踏むことが同時に進んでいく、運の良い巡り合わせがあって、ジャズ一本になってから14年ほどになります。


Q企業理念について教えてください。

一緒に演奏する仲間を、絶対に否定しないということです。ジャズは、クラシックのように「週に3回練習して合わせましょう」ということがなく、現場に行ったらその場で初めて会う歌手やサックスプレイヤーと演奏することがほとんどです。自分が練習してきたタイム感の取り方と全然違ったとしても、それを否定はしません。
今あるものでどれだけ素晴らしい演奏ができるか、お客様にどれだけ素晴らしい演奏を届けられるかの方が大切だと思っています。その場で「あなたの取り方はここがずれている」と言っても、本番までに気づいて直せるわけではありません。それを言って相手を萎縮させてしまうよりも、ずれていないように聞こえるように、こちら側がどう寄り添えるかを考える方が、よほど建設的です。ジャズは自由が尊重される音楽だからこそ、そのときどきのオリジナリティをどう活かすかが大切だと思っています。


Q仕事を行う上で大切にしていることを教えてください。

ジャズの話とは少し軸を変えると、「平和の輪」を大切にしています。日本人は、話し合いで物事を決めてきた民族だと思っています。空気を読む、というのもその延長で、大体の人がその場の空気を感じ取れていて、話し合いが決裂しそうになる前に、周りがふっと空気を変えて、本人同士が我に返る瞬間を作る。そうやって決裂に至らないようにする人たちが、周りにいるからこそ成り立っていると思っています。
これはお客様同士でも、ミュージシャンとお客様の間でも、ミュージシャン同士でも同じです。譲れないものがあって、もう一緒に演奏できないという場面があったとしても、それは決裂ではなく「今はその時期じゃないね」という離れ方でいいと思っています。5年後、10年後にまた出会って、もう一度話し合えば寄り添えることもある。そこには絶対的な優しさが大切だと思っています。


Q今までで一番辛かったことを教えてください。

一番辛かったのはコロナ禍です。ジャズバーやクラブが全部閉まってしまいました。私は雇われピアニストで、就職しているわけではないので、助成金のようなものも望めず、今までの貯金を食いつぶしながら、何も生み出さずに毎日を過ごすことがすごく怖くなりました。音を鳴らすことで誰かに癒しを与えてきたのに、それが何ヶ月も続けてできなくなる。あれは今思えば少し病気だったかもしれませんが、何かを生み出していないと怖くて、毎日カップケーキや蒸しケーキを作って近所や実家に配り続けていました。
支えになったのは、周りにいてくれたオーナーさんたちです。助成金をもらうために店を閉めればよかったのに、それをせず、無観客で配信ライブを続けてくださったお店が一軒ありました。また別のお店は再開したら「阿部ちゃん、◯日から来てね」と気にかけてお仕事をくださったクラブのママさんもいました。それ以外のお仕事もほぼ戻ってきて、声をかけられたらすぐに行けるように、その間もずっと練習だけは続けていました。支え合える方々との縁があったからこそ、また音楽を続けようと思えたんだと思います。


Q現在の企業課題/事業課題について教えてください。

香川には、実はすごい才能を持ったミュージシャンが揃っているんです。東日本大震災のときに、まだ小さいお子さんを連れて香川に移ってきたサックスプレイヤーや、ニューヨークの名門ドラム学校で学んでニューヨークでも活躍していたのに日本に戻ってきたドラマーなど、本当に素晴らしい方々です。なぜこれが世に出ていないのか、おかしいと思っています。彼らを引き立てながら、まずは関西圏からライブを始めて、一緒に売れていきたいと思っています。私たちに共通しているのは、お客様も生徒もオーナーさんも含めて、みんなが仲間であるという優しさです。この音楽を広めながら、和を広げていきたいと思っています。


Q企業としての最終的な目標を教えてください。

大きな夢として、今ジャズは死にかけていると感じています。団塊の世代の方々が30代、40代だった頃は、ジャズバーやクラブがたくさんあって、ジャズに憧れを持ってライブを聴きに行っていた世代でした。今はジャズ的な要素が洋楽やポップス、ロックの中に取り込まれている一方で、ジャズそのものを聴きに行く人はだいぶ減ってしまったと思います。
私は今、ジャズセッションのホストを務めていますが、楽器を持つ若い人たちが、ジャズで夢を見られない状況になっています。お店がどんどん減っているので、ジャズで稼いでみたい、ジャズでいろんな場所で演奏したいという気持ちになれない。もったいない才能がたくさん埋もれていて、悲しい世界になってしまったと思っています。ジャズを聴きに行く人が増えれば、彼らもまた夢を見られるようになります。ポップスから聞こえるジャズ的な要素に満足するのではなく、ジャズを演奏することで自分たちの気持ちを表現し、その音楽で周りの人が元気になる。そういう文化を、もう一度取り戻したいと思っています。


Q今後個人としてチャレンジしたいことを教えてください。

ライブをいろんな場所でやっていって、自分たちのことを知ってもらいたいと思っています。ライブに来てくださったお客様から「ピアノを教えてもらえますか」と声をかけていただくことがよくあるので、それを全国でやっていって、声をかけてくださった方にEラーニングをお勧めし、そこからコミュニティを作っていきたいと考えています。ジャズの悩みを共有したり、初心者向けのおすすめのジャズセッションの情報を交換したりしながら、日本中でコミュニティを増やしていって、寂しい思いをする人がいなくなるようにしたいと思っています。


Q今後知り合いたい事業内容や会社様を教えてください。

コミュニティを作っていくうえで、SNSやネット関係に詳しい方、コミュニティの運営のやり方を知っている方に知り合いたいです。また、いろんな場所でライブをしていきたいので、日本全国のジャズバーの経営者の方々にも、ぜひ知り合っていきたいと思っています。有名だったジャズバーが閉まってしまうような時代だからこそ、そういう場所やオーナーさんたちをつなげていきたいです。


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